アニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』 ダイ役・種﨑敦美さんと真バーン役・子安武人さん対談掲載のVジャンプ12月特大号は本日発売!!

本日発売のVジャンプ12月特大号では種﨑敦美さん×子安武人さん対談を掲載中です! 今回は本誌の一部&未公開対談を特別にお届けします!

――種﨑さんは大魔王の身体を預かっていたミストは、どのような人物だと分析していましたか?

種﨑 存在していた時間や理由、成したことなど具体的な部分は違うにしても、バーンに尽くしていないと自分が自分でいられなかったり、自分がいられる場所をつくってくれたというような点においてはフレイザードに近しいものがあるのかなと感じました。なので何故バーンに忠誠を誓っていたのか、何故バーンの言葉はすべてに優先するのかを聞けば聞くほど切なかったです。

子安 そうですね、種﨑さんがおっしゃったようにミストは忠誠心がすごく強くて、裏切り者の多い魔王軍の中でもバーンにとって信頼できる部下だったのだと思います。魔王軍から寝返って勇者側につくのは物語的には見映えはいいですが、魔王側からしてみればとんでもない裏切り者で、信頼するに値する人物じゃない。その中でミストは本当に忠誠心が高く、バーンにとって信頼できる部下だったわけです。こういうタイプが自分の部下にもっといて欲しいなと思いますね。

種﨑 闇の衣を脱いで正体を明かすときには、お許しくださいとまで言っていましたよね。

子安 『ダイ』は勇者たちの物語だからどうしても正義側の視点になってしまうけど、魔王軍の視点に立つとミストって本当にいいやつだったんじゃないかな。

種﨑 フレイザードもそうでしたけど、かわいそうな境遇のキャラクターでしたね。

子安 僕は悪役を担当していることが多いからそういう考えになっちゃうんだけど、もともと正義側の人が悪役になっているのではなくて、最初から魔界の住人たちだからね。人間と争ったり悪いことをしたりするのが当たり前の世界だから、それらは不思議なことではないと思うし、むしろ裏切るやつのほうがよっぽど悪党に見えちゃう。善悪はあるけれど、どちらにも正義というものはあるのだと思います。

種﨑 そうですね、バーンにも正義はあると思います。

子安 もともと魔族なわけだし、魔界の住人にとって間違ったことをしているわけじゃない。彼らにとってバランみたいな立ち位置が不明瞭な人物は、勇者側にしてみればカッコよく見えるかもしれないけれど、魔王軍側から見ると何を考えているのかわからない信用ならないやつになってくるわけです。

種﨑 視点の位置でキャラクターの捉えかたがまったく変わってくるのは面白いですよね。それがもしバランが主人公の物語だったら、また見えてくるものも違うかもしれないですし。そういった物語の多角的な見えかたは、『ダイ』が大人でも楽しめる理由の1つなのだと思います。

――以前のインタビューで子安さんは、ミストやハドラーのスピンオフも面白いのではとおっしゃっていました。

子安 やっぱり魔族には魔族なりの正義があるとか、別角度での描きかたで面白い物語がつくれるような気がします。でも需要が…あるのかな(笑)。

種﨑 いえいえ、あると思いますよ! どのキャラクターでもそういった外伝の需要がありそうなところが、『ダイ』のすごいところだと思います。チウの大冒険とか見てみたいです!

――それではミストに続き、大魔王バーンとはどのような人物だと思われますでしょうか。

種﨑 言い回しが合っているかわかりませんが、性格の悪い技が多いなと感じます(笑)。瞳の宝玉にしても見ているしかできないなんてなんなら一番しんどいですし、さらには自分が圧倒的に有利なのに、ピラァ・オブ・バーンのような大仕掛けまで周到に用意していたわけで…絶大な力に加え、頭は切れるし性格も悪い、といった印象です。でも、「だからこそ」大魔王として君臨しているのだろうなとも感じさせられます。

子安 うん、性格は悪いだろうね。強いし、長年生きているとやっぱり退屈なんじゃない? 何か面白いものはないかという感情と、性格の悪さが組み合わさってしまったような感じがする。でもあのいかにも悪賢そうな雰囲気は、老バーン役の土師孝也さんにも要因の一端があると思う(笑)。土師さんが作りあげていった意地悪そうなバーンを僕が引き継いでいるだけであって、ピラァ・オブ・バーンも若いバーンが計画したことじゃないからね。

種﨑 ダイくんはあまり多くは語らないけどほんの数か月の冒険のなか、あの小さい体でどれだけのものを受け止め、抱え、感じてきたのか、守りたい大好きなもののために挑み続けてきたのかを思うとたまらないです。ダイくんたちの数か月はバーンにとっては本当に一瞬みたいなものだろうし、バーンやヴェルザーの会話は想像もつかない雲の上の会話かもしれませんが、ダイくんたちの願いや想いもバーンには絶対にもう想像することも出来ない尊いものだと思います。

――子安さんはバーンをどう分析していますか。

子安 性格が悪いというのは同感なんですが、先ほども言いましたがそれは土師さんのほうなんで!

種﨑 やっぱり土師さんに一因が?(笑)

子安 僕は真バーンだから。若いころはもっと戦うことが好きだったり、血気盛んなところがあったりもしたのかもしれないと想像がつきます。でもそこから歳をとってやることもなく退屈になって、ちょっと勇者を育ててみようかなと思ったのが土師さんバーンだったのかもしれない。

――若い自分を控えに用意するずる賢さもあって。

子安 そう、まるでベテランの政治家みたいに、武力だけでどうにかするのではなく、ちゃんと頭も回る。相当な策略家ですよね。魔界には冥竜王ヴェルザーというライバルもいて、唯一無二の強さではなかったからこそ若い自分の備えもしていたという面はあるかもしれませんね。

――魔界に太陽をもたらすことがバーンの真の目的でしたね。

子安 魔界がどんなところなのか作中ではほとんど語られないから、太陽といわれてもあまりピンとは来ないけど。

種﨑 太陽のおかげでどんないい事があるかといわれるとパッと出てこないですが、やっぱり「誰にも等しく、平等にあるべき絶対的なもの」が自分たちにだけ届かない、というのはきついですよね。

子安 魔族が太陽は苦手というのだったらわかるのですが、太陽を欲している魔族というのは僕にとってはすごく新鮮で。夜の世界のほうが好きそうなイメージですよね。

――人間にだけ地上を与えて、魔族を闇に追いやった神への反逆という描写も原作にありました。

子安 本音をいうと、土師さんの老バーンのやられ役を僕が担当したのかなと思います。老人を痛めつけて勝ったとしても正義側としては後腐れが残っちゃうし、若い姿で互角の立場で戦ってこそですよね。それを倒すというカタルシスのために、真バーンとして僕が担当しているんだと思います。だから土師さんからバトンタッチするときには、あとのやられ役は任せてくださいと言ったくらい。僕はバーンの思想がどうのというよりも、決戦の部分を担当したという感じですね。バーンは圧倒的な強者として描かれていますが、その絶対的なものがねじ伏せられてしまう不格好さやみじめさを表現するのが僕の役回りだと思いました。そのあたりも見どころかもしれませんね。

――子安さんは以前のインタビューで、ダイ一行のキャストさんにプレッシャーをかけて動揺を誘うようなこともしていたと伺いましたが、以降もそういったことは行われたのでしょうか。

子安 似たようなことはやっていましたけど、あくまでいじりですよ(笑)。最後のほうはダイとポップ、それとレオナとの掛け合いばかりだったので、ポップ役の豊永利行くんをよくおちょくってましたね。まったく違う話をしてみたり。僕のキツい冗談が通じる相手、ヒュンケル役の梶裕貴くんあたりが一番いじりやすいかな。種﨑さんは真面目な方だし、お芝居の話をよくしていました。僕は知りたいことがあるとすぐ聞いちゃうタイプなので、いろいろ聞いたりしましたね。

――子安さんから見た「種﨑ダイ」はどのような印象でしたでしょうか。

子安 魔王軍と勇者側で収録が分かれていたので、僕が知っているのは今の種﨑さんですね。放映開始当初と今の自分は、違って感じる?

種﨑 自分の未熟さを毎話悔しく思いながらも、大好きなキャスト・スタッフのみなさんと同じ場所にいたい、いきたい、いいものを作りたいという想いで2年間やってきましたが、最初のころの話数を観返すと「そのときその瞬間の精一杯」で演じていて、結果的には旅立ちのダイくんにも合っていたのかなと感じたりします。

子安 ダイと一緒に成長してきたって証拠じゃないかな。うまくキャラクターと本人とがマッチしていたんじゃないかと想像はつきますよね。それがすべてだと思います。

――なるほど。では逆に種﨑さんにとって、子安さんはどのような存在でしょうか。

種﨑 クライマックスの最終決戦で子安さんの役者としての偉大さを感じさせていただきました。収録が終わってからいろいろな現場で「子安さんが本当にすごくて」と話すと、みなさん「そりゃ子安さんだもん」と返されて…。子安さんと一対一の掛け合いで収録もあったり、毎回偉大な先輩方に囲まれて、なんて贅沢な空間で収録していたんだと改めて思いました。子安さんは先ほどおっしゃったようなご自身での考えや信念があって、演出さんの意図も汲みながらもご自分のプランで演じ切るのが本当にすごいです。まさにプロフェッショナルで、私は何十年かけたらたどり着けるのか、ひょっとしたら死ぬまで無理かな…と思わせられたほどです。

――子安さんは担当されるキャラクターに対して、心がけていることはありますでしょうか。

子安 僕は悪役が多いんですが、主人公が対峙する立場でありつつも乗り越える相手だから、最初から負けムードではしゃべれないんですよ。簡単に倒せるような相手ではいけないし、絶対強者として立ちふさがっていかなきゃならないプレッシャーは毎回感じています。もちろん演技のほうももっともっとうまくなって、若い役者さんに負けられないなと思いながら一緒にやっています。種﨑さんは収録で気持ちや想い、熱い魂のようなものが伝わってきて、掛け合いはすごく楽しかったですね。うまくいかなくてジメジメしている姿を見ていると、ああこの方はいい役者になっていくだろうなって感じさせられます。僕自身にも刺激になって、まだまだ老けこむわけにはいかないなと思わさせられました。

――種﨑さんはそんな子安さんとの掛け合いで、感じられたことはありますでしょうか。

種﨑 自分がつまずきながらも現場で探求したり挑み続けたりしていけるのは、子安さんのような偉大な先輩方がドンと構えてくれているからだということを改めて思いました。それから…この場を借りて子安さんにお伺いしてよろしいでしょうか。子安さんの静かに語るトーンの怖さというものがあると思うのですが、最終決戦のときのような激昂するトーンはそれ以上に怖くて、ああいった声の表裏のつけかたは、すべて計算通りに出されているものなのでしょうか。

子安 すべて計算…といいたいところだけど、声を少し裏返させたりとか、少しだけ高くしたりとか、そういった流れをある程度ねらいをつけている感じかな。それが絶対にできるという保証はないから、理想に近づけるための集中力と、キャラクターとの同化をすごく重要視してる。一体感というか、どういう感情でいったら自分の理想のお芝居に近づけるのかということを頭の中で仕組みを理解して臨むけど、うまくいくとは限らなくて失敗することもある。スポーツでも、例えばフィギュアスケートの選手がトリプルアクセルの成功率が40%で失敗する可能性が高かったとしても、跳ぶことに挑戦する。その成功率を高めるために練習をするよね。そんな感じに似ているかもしれない。理想のお芝居、自分の思い描いたものにあてはめるために成功率を高めることをしている感じかな。

種﨑 それは、例えばどのような?

子安 そのキャラクターにどれだけ寄り添えるということはもちろん大事かな。演じるのが好きだし、うまく表現したいし、みんなが想像しているものよりも何段階か上のお芝居をしたいなって欲を持っている。そういったことを普段から考えることは大事だと思う。

種﨑 一番大事なのは気持ちだと思うんですが、気持ちだけ高まっていても、声として聞いたら受け取る側に伝わらなかったりしてモヤモヤすることがよくあります。

子安 そうだよね。声優って職業には、気持ちをストレートに表現できるような言い回しやしゃべりかたというのがあると思う。それができないと、いくら気持ちだけ高めていても伝わらない事態が起こっちゃう。それはやっぱり自分の中で探さないといけないものなんじゃないかな。僕は若いころ、人に聞かせたりだとか録音したりだとかして、研究してた。そのうち、この発声のしかたや、この抑揚のつけかたではやりたいことが伝わらないなというのが見えてきて。自分を知ることは大事かな。自分を知って、自分を突き詰めていくことが個性になる。この役は誰でもできるけど、子安さんに任せて良かったねと言われるお芝居をしなきゃならない。そういったことを考えながらいろいろなお仕事で経験を積んでいけば、おのずとたどり着けると思うよ。僕もまだまだ自分の芝居がパーフェクトだとは思っていなくて、もっとうまくなりたいって思っているし、うまくいかなくて悔しい思いをすることもいっぱいあるよ。

種﨑 私も2年間、ずっと悔しい思いがありました。

子安 それでいいんじゃないかな。大事なことだと思うよ。

種﨑 『ダイ』のキャストさんは偉大な先輩方ばかりですが、みなさまもっと高みへ上へ、という気持ちが伝わってきて本当にすごいです。最後の最後で子安さん演じるすさまじいラスボスとの掛け合いも経験できて、本当に贅沢で貴重な時間でした。何十年かけてでも、いつか今のみなさまがいる場所までたどり着けたらと思います。

――最終決戦の収録時のエピソードをうかがえますでしょうか。

子安 もう2人で、ひたすらでかい声出し合ってましたね。種﨑さんに、女性が少年の声で叫ぶのって大変だねって話してました。

種﨑 男の子役自体は初めてではなかったのですが、毎話こんなにも叫び続けている役は初めてでした。この先の物語を知っているがゆえにこのままじゃ最終決戦は無理だと序盤で感じてから、新たなボイストレーニングにも通い始めました。加えてメンタルも大事で、本番で変に緊張してしまうと思った通りに声が出せなかったりとか…。

子安 叫ぶ演技はただ大きい声を出すだけじゃないので、技術も気持ちも混ざってこないとやれないことなんです。叫びがうまい役者さんは相当に努力しているわけで、種﨑さんは自分で納得がいかなかったときもあったんじゃないかな。収録ブースにずっと立っていたりとか。

種﨑 OKをいただいたそばから、今のがMAXなのか、より良くなるには…ということを無意識に考えてしまっていたのかもしれません。どれだけ全力で挑んでも『ダイ』では未熟さを痛感してばかりでした。

子安 種﨑さんが主役なわけだし、自分の納得するようにやっていいんじゃないの、とも声をかけました。

種﨑 今までも何度か、録り直しをさせていただいたこともあります。すでにOKが出たものに録り直しを申し出るのは割と勇気のいることでもあって、『ダイ』以外の収録ではそうそうないのですが、子安さんはもちろん他のみなさまも気の済むまでやりましょうと言ってくださる方ばかりで。

子安 『ダイ』の収録現場はそういったことができる臨機応変さがあったと思う。みんなが良いものをつくる熱意に満ちた雰囲気がそうさせるんじゃないかな。

種﨑 本当にありがたいことです。感謝が尽きません。

――最後に、読者のみなさまにメッセージをいただけますでしょうか。

子安 本当にクライマックスで、最後まで気の抜けないバトルが続きます。作画も音声もすばらしいものになっているので、盛りあがりは最高潮に間違いありません。2人の魂のぶつかり合いを、肩肘張らずにぼーっと観ていただけるといいかなと思います。勝つのは大魔王バーン!! …かも!?

種﨑 偉大な作品が、ついに結末を迎えます。第1話から第100話まで、作品のすべてにキャスト、スタッフ一同の魂がこもっております。唐澤監督が最終回のアフレコ後の挨拶で「最終話まで、最後まで、いいものに仕上げますので楽しみにしていてください」と仰ってくださいました。原作を読まれている方もそうでない方も、30年前のアニメを観ていらっしゃった方もそうでない方も、みなさまそれぞれの作品への想いを胸に、最後まで一緒に、大冒険を見届けていただけたらと思います…!

――ありがとうございました!

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